学生の頃の貧乏体験記になりますが,何しろひどい貧乏で万引きまでした国立大学の学生だったのです。
今では大学を卒業して一応は有名企業の商社に就職して親(母親)と一緒に暮らしていて、苦労した親を一安心させていますが・・。
私の家は母子家庭だったのです。 二つ違いの姉弟がいて私が小学校の時に父親を交通事故でなくしてからは、貧乏な生活の始まりでした。
母親は父親の会社へ社長の世話で就職して私達を面倒見てくれましたし、私自身も中学校のときから新聞配達をしながら母親を助け、高校の時も殆んどアルバイトの連続でした。
ただ、私自身は勉強はそんなに嫌いな方ではなくて、そこそこの地元の高校へ進学しました。
ところで、我が家の隣りにいた子供の頃から仲良くしてもらってよく遊んだAさんとはその後もお付き合いがあって、特に勉強をよく教えてもらいました。
その先輩というのは同じ高校の先輩でその高校でもトップクラスでの優秀な成績で卒業し、当時は京都大学へ入学したエリート学生だったのです。
そんな彼に勉強を教えてもらうために、隣の家へよく訪ねていったものでした。
そして私の苦手な数学嫌いのところをよく教えてもらって、特に勉強とは・・?、というような学びの基本まで教えてもらったのです。
それ以降数学や勉強そのものが好きになり、遂に、私自身国立大学へ入学することが出来たのです。
勿論、貧乏なので私立の大学へ入学はとてもじゃないが資金的に無理があり、どうしても学費の安い国立という条件があったのです。
地方の国立大学でしたが、単身で下宿しながらの学生生活で、親からの入学のための資金などはありませんでした。
ただ母親は親戚から借金しても私のために払ってくれると言っていましたが、私自身はそれを絶対反対したのです。
全部私自身が行うということでの入学でした。
入学する時に学生支援機構の奨学金と教育ローンとで私自身が借金する形で学費を賄いました。
その他にも生活費や下宿代を賄うために、アルバイトで何とか稼ぎながら支払ってきたのでした。
そんなことで、貧乏な学生の生活は相変わらずで、「貧すれば鈍する」ともいいますが、全くわたし自身にも当てはまる故事でした。
貧乏をすると毎日その生活のことばかりに気を取られ、明日のことばかりを考えるようになるから、人は知恵や頭の回転も鈍ってしまい、賢い人でも愚かにってしまうの例ではないが、遂に、私は盗みをしてしまったのです。
ある時、どうしても欲しい本があって本屋で物色していたところ、お目当ての書物があったのです。
勿論、当然ながらナケナシのお金を払って買おうとしたところ、店主がタマタマ留守だったのです。
それを良いことに「まずいかな」と思いながらもその本をカバンの中に入れてしまい、何食わぬ顔で店を出ようとしていたところだったのです。
ところが、いきなり店主が出てきて呼び止められ、「今、本をバックの中に入れましたね」とズバリ言われたのです。
私は、顔面蒼白、体をブルブル震わしながら、平謝りに謝ったのです。
そして店主が言うには「あんたは真面目そうだし、この本も特殊な専門書で余程、欲しかったのだろう、 多分、魔が差したんだろう」そして、「今度だけは許してやるから二度とするんじゃないよ」と言われて、恐縮しながらお金を出して改めて買い求めたのでした。
その時の私の何とも言えぬ気持ちと店主の思いやりの気持ちが交差して、改めて貧乏人の辛さを思い知ったのです。