感動する

雪の中の優しさ

私は、北海道で暮らしていて冬になるとかなり雪深いところに住んでいます。
吹雪ともなると、ほんの数歩前までの距離さえもわからなくなってしまうのです。
私は、クライアントに会うために、必要な書類を抱えてバス停へと向かいました。

ところが、ものすごい吹雪でバスは発車せずに、タクシーの列に並ぶことになったんです。
ですが、殆どの人がタクシーを利用するため、数に限りがあるんです。
このままでは私は乗れないと思いました。
ちょうど目の前の中年男性がラストだったんです。
どうしようと焦ってきました。
もし、約束の時間に遅れることがあったら、きっと私は信頼を失ってしまうと思ってたんです。
と、不意に中年男性が私を見て、行き先を聞いてきたのです。
もし、同じ方向なら一緒に乗っていこうと言ってくれて、私は急いで事情を説明して行き先を告げました。
ですが、残念なことに男性の目的地は正反対でした。

がっかりとうなだれる私に、男性は開いたタクシーのドアに私を押し込めました。
戸惑っていれば、男性がにっこり笑いました。順番を代わってくれたのです。
吹雪はますますひどくなり、男性だって用事があるだろうと思いました。
すると、戸惑う私に男性が親指を立てて、「仕事、頑張りなさい」と言ってくれたのです。
嬉しさで涙がこみ上げてきました。
そして、タクシーの運転手さんに私が行くところと、急いでいることを伝えてくれました。
私は、何度もお礼を言いました。

発車したタクシーのなか、触れた優しさが嬉しくて泣けてきました。
最近は人との繋がりが薄くなったと聞きますが、こんな優しい人もいるんだと思うと、更に涙がこぼれました。
すると、タクシーの運転手さんが無線で会社の方に連絡をしてくれました。
「大丈夫ですよ。今、状況を説明したので、あの男性のところにタクシーはすぐに行きます」
泣いている私を慰めてくれて、さらに泣けてきました。

優しさがどんどん連鎖していくようで、寒いのに心の中はポカポカしてきました。
きっと、あの男性だって急いでいたと思うのです。
それなのに、初対面の私に譲ってくれるなんて。
もし、逆の立場ならできるかわかりません。
クライアントさんとの約束には数分遅刻しましたが、信頼を失わずにすみました。
うっかり名前を聞くのは忘れてしまい、もう会うことはなかったのですが、今でも雪が降ると思い出します。
寒い日に感じた温かな優しさを。
そして、自分も人に対して優しくありたいと思うのでした。

-感動する
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