「あんな、嘘はついても良いんよ。」そろそろ仕事に慣れ始めた20代の頃に任期付きで会社に来た40代の女性上司から言われた言葉です。
この言葉をそんなことも知らないの?的な圧をかけながら、あざ笑うような感じで言われた時の衝撃は、あれから20年近くたった今でも忘れることはできません。
彼女は会社の上層部からの推薦で来た人でした。
見た目も綺麗な人で、人の心をつかむのも上手な人でした。
そんな彼女は、海外で働いた経験があって、大学院でも主席だったということでした。
しかし、ある時、彼女のことをあまりよく思っていないらしい男性社員が、彼女に海外の会社に本当在籍していましたかというようなことを他にも人がいる時に聞きました。
彼女は一瞬間が開いて「いましたよ、○○君ったら、突然何?」と答えましたが、怪しい感じではありました。
その後、その男性社員が半年くらい研修を兼ね、海外に出向することになりました。
すると、彼女は戦闘を開始しました。
最初は彼のライバルに当たる人に「彼、やったわね。上司に可愛がられていると得よね。」とか耳打ちしていました。
彼が上司に可愛がられているのは本当のことなので、そんなこと、わざわざライバルにあたる人に言わなくても良いのにと思っていました。
ある日のことです。
「上司のところに行くんだけれど一緒に来て。」と言われました。
上司のところに行くと、少し軽く雑談をした後、彼女が「今日は陳情に来たんです。」と言いました。
内容は海外出向中の彼は問題ありです、おかげで部署に良くない影響を与えているから、彼を切って自分を残すべきだとみんな言っていると言いました。
そんな事実、どこにもないので、とても驚きました。
上司の部屋を出たところで、はっとして、さすがの私も片棒を担いでいると見られたら嫌だと思い、「今の話、事実じゃない、どうしてそんなことを言ったのですか」と聞いたら、私の顔をじっと見て、無言で部屋の前から離れ、エレベーターに乗ったところで冒頭の言葉を言われました。
あの顔、あの声、全て今でもはっきり思い出せます。
綺麗だなと思っていた彼女の顔はゆがんで見えました。
最終的には、例の彼が予定よりも早く会社に戻され、女性の方が任期満了でさようならでした。
彼女にすり寄っていた人も彼が帰って来るとさーっと引いていき、人間の醜さも見ました。
私は嘘はやはりついてはいけないと思っています。
でも、それ以来、ネガティブな話を聞く時はそれはその人の見解であって、嘘とまでは言わないまでも、事実かどうかは分からないと思いながら話を聞くようにしています。
20代に受けた衝撃。あんな、嘘はついていいんよ。