2年前まで、私の家には老猫・ユーがいました。
御年17歳のご長寿猫で、幼い頃から一緒に生きてきた私は、彼を弟のように思っていました。
しかし、ユーは14歳ごろ、うっかり家から脱走してしまい、大怪我をして帰ってきて以来、てんかんの持病を患ってしまったのです。
発作の痙攣と失禁が止まらず、何度も「もうダメかもしれない」と思う場面がありました。
彼を抱きしめながら、何度も何度も覚悟を決めました。
でもそのたびに、不死鳥のごとく復活して、ふたたび穏やかな姿を見せてくれた、カッコいい猫です。
しかし、17歳ともなると、寄る年波には勝てず、だんだん目に見えて体力が落ちてきました。
歩いているときにふらつくようになったり、寝ている時間が増えたり…。
それでも、これまで何度も覚悟を固めさせてくれた彼です。
私は彼が亡くなるまで、彼に全身全霊を注ぎ、彼だけを愛そうと固く心に決めていました。
そんなときに出会ったのが、当時まだ生後1か月にも満たない猫・ぽんです。
ぽんは心無い人が会社に連れてきた子猫で、その人はぽんを「会社に放しておけば勝手に育つだろう」と無責任なことを考えていました。
私は義憤にかられ、また、ぽんに運命的な何かを感じたこともあって、その場で自分がぽんを引き取ると宣言。
そして、家族を半ば強引に説得して、そのままぽんを連れて帰りました。
正直、迷いが無かったわけではありません。
私はユーだけを一心に愛したかった。
それに、穏やかな余生を送ってもらいたいユーの、人生の最期を邪魔してしまうのではないか?という恐ろしさもありました。
それでも、私はぽんを連れて帰ったのです。
ぽんの出現とパワフルな若さに当てられて、ユーは最初、かなり辟易していました。
私は彼の体力が削れないように最大限気を使いながら、ごめんよ…とユーに何度も謝りました。
しかし…嬉しい誤算があったのです。
ユーは、ぽんに振り回されるうちに、必然的に動く頻度が増え、へとへとな時期を乗り越えると、以前より明らかに体力がついてきました。
さらに、ユーがてんかんの発作で苦しんでいるとき、私たち人間は物音を立てないようにひたすら見守るしかなかったのですが…ぽんはユーにスタスタ近づくと、ユーのおでこにポンと手を載せました。
私たちは「あっ!」と焦ったのですが、不思議なことに、ユーの発作が一瞬にして収まったのです!
こういった出来事は、一回二回ではありませんでした。
結局、天寿まであとわずかと思われたユーは、ぽんを連れ帰ってきてから1年近くも元気に生きてくれました。
ユーの元気な姿と、ぽんの奇跡的なはたらきを思い出すたびに、今でも感動して涙が出てきます。
老猫・ユーを救ってくれた猫