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私には、友達の嘘で忘れられないものがあります。
まだ、私が小学生5年生の時のことで、その子とはそんなに仲良くはありませんでした。
なぜかというと、その男の子はいつも家庭の自慢ばかりしてくるんです。
「俺のパパさ。今はアメリカで仕事してんだ」
彼の言葉に、私もクラスメイトも尊敬の眼差しを向けました。
まだ、当時は海外で仕事をする人がいなくて、その子のお父さんがかなりのエリートだと勝手に想像していたのです。
彼によると、お父さんというのは、優しくてスポーツ万能で、なんでもできるそうです。
運動会や父兄参観日には、彼の家はお母さんだけでしたが、クラスメイトは変に思いませんでした。
ですが、ある日のことです。
父の日が近づいてきて、皆でお父さんの絵を描くことになったのです。
私の隣の席だったその男の子は、なかなか描こうとしませんでした。
すでにほとんどの子が描き終わったのに、その子は輪郭さえ描いてはいませんでした。
私は、その様子を見ていて、思わず「まだ描けないの?」と聞いてしまったんです。
すると、その男の子はキッと私を睨むと私の絵を破いて教室を飛び出して行ってしまいました。
私は、悲しくて悲しくて、そして腹が立ちました。
それから、その男の子とは口もきかなくなりました。
やがて、ある噂が流れました。
「あの子のうち、お父さんがいないんだって」
その噂は瞬く間に広がっていきました。
噂によると、彼の両親は出産前に離婚。
彼がお父さんに会ったことはないとのことでした。
「うちのお母さんが言ってたんだけど、来週転校するんだって」
女手1つでの子育ては限界に感じたのか、彼の母親は実家に戻るそうです。
私は、これまでの彼の嘘を思い出していました。
皆が父兄参観日に来る自分の父親について話している時、彼はどんな気持ちでお父さんがアメリカに勤めていると言ったのでしょう。
真っ白い画面を見ながら、なかなかお父さんの絵が描けなかった時、どんな思いだったのでしょう。
優しくて、スポーツ万能で、なんでもできる。それは、きっと理想のお父さんだったのだろうと思いました。
結局、彼には謝ることもできずに転校の日を迎えてしまいました。
噂になってからというもの、ずっと暗かった彼は、泣きそうな顔で去っていきました。
嘘は確かにいけないものですが、世の中には許される嘘もあってもいいと思いました。
あれから、30年がたったとき、かつてのクラスメイトが彼にバッタリ会ったそうです。
今は、2人のお子さんがいる、素敵なお父さんになったそうです。
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